2007年4月25日 (水)

受刑者処遇法の運用その6 日付が1日違っただけで「そんな懲罰は存在しない」

 法務省は、執行を終了した懲罰に対する審査の申請を不適法として却下するという、不当な運用を行っている。このことは既に批判しておいた。ところが、この不当な運用を前提として、さらに不当かつ安易な不適法却下が横行していることが明らかになった。
 以下は、東京矯正管区が今年行った不当な裁決の一例である。
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裁決書

事案番号 東管平成18年(審)第○○○号
審査申請人 ○○○○
      ○○市○○○○(○○刑務所内)
処分庁 ○○刑務所

 上記審査申請人提出に係る平成18年12月20日付け審査の申請について、次のとおり裁決する。

主文
 本件審査の申請を却下する

理由
1 申請の趣旨
 処分庁が平成18年12月6日に申請人に対してなした懲罰処分について、その取消しを求める。
2 判断
 処分庁が平成18年12月6日に申請人に懲罰を科した事実はなく、本件申請は存在しない処分の取消しを求める不適法なものであるから、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律第116条第2項の規定により準用される行政不服審査法第40条第1項の規定により、主文のとおり裁決する。
 なお、審査庁が職権により調査したところ、平成18年12月7日、処分庁が申請人に対して閉居7日の懲罰を科した事実が認められるが、当該懲罰処分は同月13日にその執行を終了しており、既に不服を申し立てる法律上の利益を有していないので申し添える。

平成19年○月○日 東京矯正管区長 柴田元始
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 この裁決の最大の問題点は、審査対象である懲罰処分の処分日の記載が1日違っていただけで、「不適法」として却下している点である。おそらく、申請人(受刑者)は「申請の趣旨」として「12月6日に○○刑務所が私に対してなした懲罰処分を取り消す。」というように書いたのであろう。そして、刑務所の記録では懲罰処分の日は「12月7日」となっていたのであろう。確かに、審査対象が特定されなければ審査のしようはないから、取り消すべき処分の特定は審査の申請の必須の要件である。しかし、逆に言えば、特定されてさえいればよいわけで、何も処分日の日付で特定する必要はない。申請人(受刑者)が記載した処分日の前後に他に該当する懲罰処分がなければ、申請書の記載全体から審査対象は「12月7日」の懲罰処分に特定されたものとして、実質審査をすればよいのである。
 さらに言えば、申請人(受刑者)が処分の特定の仕方として「○月○日に○○刑務所がなした」と記載したのは、法務省の用意した記載例がそういう書き方しているからであり、誤記の責任の一端は法務省にもある。そもそも、懲罰処分は口頭で言い渡されるのであり、受刑者は処分日を知りようがない。「処分日」なるものは、要するに、処分権者が正式な記録に何日と記載したかによって決まるとしか言いようがない。それは懲罰を告知したその日であってもよいし、その前日の懲罰審査会の終了直後であっても何ら不思議ではない。書面で告知されるなら、処分日の記載もあるから、受刑者も処分日を確知できるが、口頭の言い渡しでは確かめようもないのである。したがって、取り消すべき処分の特定の仕方としては、「私に対して○月○日に告知された懲罰を取り消す。」とするのが素直であり、かつこれで十分である。しかるに、法務省が用意した記載例にならって、「○月○日に○○刑務所が私に対してなした」と無理に書こうとすると、本来知りようのない処分日を推測して書かざるを得なくなるのである。
 それでは、東京矯正管区長はどうすればよかったのか?処分日の記載が1日間違っていても処分の特定はあったものと善解して、実質審査をすればよかったのか?それとも、日付の誤まりを補正させたうえで、実質審査すればよかったのか?しかし、悲しいかな、「執行を終了した懲罰に対する審査の申請は不適法」という法務省の現在の解釈・運用を前提とする限り、本件ではどうやっても実質審査に入るわけにはいかないのである。
 処分日が誤記されいている場合、本来なら補正が可能であるから、矯正管区長は相当の期間を定めて補正を命じなければならず(受刑者処遇法114条によって準用される行政不服審査法21条)、いきなり申請を却下することは許されない。ところが、本件の場合は、法務省が「執行を終了した懲罰に対する審査の申請は不適法」という誤った解釈・運用をしているため、処分日の記載を訂正しても結局は却下を免れないため、「補正不能」の場合と同様にいきなり却下されているのである。これが本裁決の後半部分である。
 しかし、これは二重に誤りを重ねているに過ぎず、受刑者にとっては混乱に拍車をかけるものでしかない。あなたが市役所か税務署で不利益な処分を受けて審査請求をしたら、処分の日付を1日間違えただけで「そんな処分は存在しないから不適法」と言われて、いきなり審査請求を門前払いされた。これで納得する人がいるであろうか?また、逆に、わざわざ日付を1日訂正させたうえで、別の理由で結局門前払いされたら、これも腹立たしいに違いない。こんな訳の分らないことになるのも、「執行を終了した懲罰に対する審査の申請は不適法」などという誤った解釈・運用を、無理やり貫こうとするからである。

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2007年3月 8日 (木)

受刑者処遇法の運用その5 懲罰に対する不服申立てを100%門前払いするおかしな不服申立制度

 受刑者処遇法が施行されて9ヶ月が過ぎようとしている。この間に受刑者処遇法の運用の光と影が徐々に明らかになっている。

 光の最たるものは外部交通である。友人との面会・文通は運用としても大きく開かれた。民間の人権団体(監獄人権センターと思われる)への信書の発信を不許可とした刑務所長の処分を追認しようとした法務大臣の処理案を、不相当として覆した不服審査調査検討会の決定によって、この流れは確定的なものになっている。
 影の最たるものは法53条の「隔離」(昼夜独居)の厳格な要件を脱法して、省令レベルで新たな昼夜独居を創出した「制限区分第4種」の制度である。これは「立法詐欺」とも言うべきものである。しかし、最近、これに匹敵する第2の「立法詐欺」候補が明らかになった。
 受刑者処遇法は、懲罰や隔離など施設長の重要な処分に対する「審査の申請」、暴行・戒具使用・保護室収容(職員の事実行為)に対する「事実の申告」、対象事項に制限のない施設長・監査官・法務大臣への「苦情の申出」という3つの不服申立制度を創設した。「苦情の申出」は単なる苦情処理の制度であるから、前二者が正規の行政上の不服申立制度といえる。
 「審査の申請」の対象は法112条1項1号~15号に列挙された施設長の処分に限定されるが、このうち「最も典型的な不服申立ての対象は?」と問われれば、多くの人が「懲罰」と答えるであろう。懲罰は施設長の権力的行為(行政処分)の代表であることは、誰しも否定できないからである。逆に言えば、懲罰に対して実効的に不服申立てができなければ不服申立制度の名に値せず、そのようなエセな不服申立制度しか持たない拘禁制度は現代的な国際人権水準に照らして失格だということである。
 ところが、まさにその懲罰に対する審査の申請を事実上100%門前払いする運用が現に行われている。以下がその裁決書の見本である。法務大臣名のこの裁決書は「執行を終了した懲罰に対する審査の申請は、処分を取り消す法律上の利益を欠くから不適法」として却下するとしている。
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法務省矯総第○○○○号

裁決書

事案番号 平成18年(再審)第○○号
再審査申請人 ○○○○
○○市○○○○(○○刑務所内)
処分庁 ○○刑務所長
審査庁 ○○矯正管区長

 上記再審査申請人から平成18年7月18日付けでなされた○○矯正管区長が申請人の審査の申請を却下した裁決に係る再審査の申請については,次のとおり裁決する。

主文

 本件再審査の申請を却下する。

理由

1申請の趣旨

 ○○刑務所長が平成18年6月2日に再審査申請人に対して科した懲罰の取消しを求めるため,同月7日付けをもって,○○矯正管区長に対して審査の申請をした。しかし,同管区長は,同月21日付けをもって当該審査の申請を却下した。そこで,同所長が科した懲罰の取消しを求める。

2 判断

 本件再審査の申請は,平成18年6月2日に執行が終了している懲罰の取消しを求めたものであり,不服を申し立てる法律上の利益を有しない不適法なものである(○○矯正管区長の判断も同趣旨である。)から,刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律第117条第3項の規定により準用される行政不服審査法第40条第1項の規定により,主文のとおり裁決する。
 なお,職権をもって調査したところ,本件懲罰を科した○○刑務所長の処置に不当な点は認められない。

平成18年9月4日

法務大臣 杉浦正健
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 確かに、行政事件訴訟法や行政不服審査法の解釈や行政救済法の一般理論では、行政訴訟でいえば訴訟要件に当たる実質審査の前提要件として、「訴えの利益」に当たる「争訟の利益」「(処分)取消しの利益」を要求している。また、執行を終了した懲罰にもこの「取消しの利益」が認められるかについては、これを否定するのが地裁レベルの裁判例の多数派である。法務省はこの一般理論を新法の審査の申請に適用したにすぎないように見える。
 しかし、これでは懲罰に対する審査の申請を「適法」に行うことは事実上不可能になる。なぜなら、まず戒告罰などは告知と同時に執行されるから審査の申請は不可能である。これは軽いからよいとしても、閉居罰も告知後ただちに執行するのが原則だから、閉居罰の執行中に審査の申請をするしかない。矯正局長通達で、審査の申請の申し出があった場合には懲罰の執行を最長7日間延期できることになっているが、延期される保証はない。延期されない場合、1日4時間以内で最長7日間の認書が認められるが、このようなことが可能であることは受刑者に周知されていない。また、周知されたとしても、このような悪条件下で申請書を書き上げたり、閉居罰執行中に審査の申請を申し出ることは、受刑者にとって心理的にも非常に困難である。
 この困難をクリアして審査の申請をしたとしても、裁決が出るまでには閉居罰でもほとんどが執行を終了してしまう。矯正管区長の裁量による執行停止の制度もあるが、それは受刑者に周知されておらず、執行停止される保証もない。2ヶ月の閉居罰という例外的な上限のケースでも、矯正管区長は90日以内に裁決すればよいのだから、懲罰の執行が終わるまで待つこともできる。要するに、矯正管区長はその気になれば、どのような懲罰に対する不服申立てでも100%却下できるのである。これで果たして実効性のある不服申立制度、行政救済制度と言えるであろうか。
 さらに、法務大臣が再審査の申請を棄却する場合には第三者機関である不服審査調査検討会のチェックを受けるが、再審査の申請を却下する場合にはこのチェックを受けないことになっているので、懲罰に関する限り第三者機関が実質審査する機会も全くないということになる。
 法務省の法112条1項の解釈・運用は以下の理由で誤っている。
① まず、懲罰を不服申立ての対象としておきながら、ほぼ100%門前払いしてしまうような法解釈が正しいはずがない。法112条1項が懲罰を審査の申請の対象とした趣旨を活かす解釈・運用をすべきである。
② 行政争訟に関する一般法として対象事項を限定しない行政事件訴訟法や行政不服審査法の解釈としては、争訟の形式的要件として「争訟の利益」「取消しの利益」を要求しないと収拾がつかなくなるとしても、もともと対象事項を吟味・限定している受刑者処遇法上の不服申立制度にこの一般理論をそのまま適用する必要はない。
③ 現に、受刑者処遇法が創設したもう一つの不服申立制度である「事実の申告」は、「取消しの利益」がそもそも考えられない「継続性のない事実行為」について、刑事施設の特殊性から特に不服申立てを認めるために、まさに創設された制度である。「事実の申告」との対比からも、法112条1項が「審査の申請」の対象に「執行を終了した懲罰」を創設的に含めたと解釈して何ら不都合はない。
④ 「執行を終了した懲罰には取消しの利益がない」という理論は判例上も確立した理論ではない。最高裁はもちろん高裁レベルの判断はまだない。地裁レベルでも、身分帳の記載や仮釈放への影響では「取消しの法的利益」としては足りないとしながらも、旧法時代の累進処遇への影響については判断を留保したものもある。受刑者処遇法施行規則(法務省令)45条5号6号は、受刑者の発信回数に直結する優遇区分の懲罰歴による必要的指定・必要的変更を明記しており、これ一つを取っても従来の下級審裁判例の理論の見直しを迫るものである。
⑤ 法112条1項各号が列挙する審査の申請の対象事項のうち、時間の経過と共に「争訟の利益」が失われる可能性があるのは、実は、6号の保安上の隔離、13号の懲罰、15号の取調べのための隔離の3つしかない。このうち、6号の保安上の隔離は長期化が予想されるので、「取消しの利益」を要求しても却下されるケースは少ない。15号の取調べのための隔離は「取消しの利益」を要求すると懲罰と同様にほとんどの不服申立てが却下される結果になる。これについては懲罰と同様に執行終了後の申請を認めるか、「隔離については後の処遇への影響が少なく、まさに解除させること取消しの唯一の実益だから、救済されるケースが少なくてもよい」と割り切るか、どちらの解釈も成り立つであろう。
 要するに、行政救済法の一般理論から離れた特別の解釈を必要とするのは、法112条1項各号のうちでも懲罰だけと言っても過言ではないのであり、このような解釈を採用しても一般理論に対する影響は少ない。
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「審査の申請」の対象事項(法112条1項1号~15号)

①領置金の使用不許可、保管私物と領置金品の宅下げ不許可
②指名医による診療の不許可、指名医による診療の中止
③一人で行う宗教行為の制限
④書籍・新聞の閲読の制限
⑤検閲のための翻訳費用を負担させる処分
⑥保安上の隔離
⑦釈放時の作業報奨金の支給に関する処分
⑧作業上の負傷・疾病が症状固定した場合の障害手当金の支給に関する処分
⑨作業上の負傷・疾病が釈放時に症状固定していない場合の特別手当金の支給に関する処分
⑩信書の発受の相手・内容・方法による制限、自作の文書図画の宅下げに関する制限
⑪差止めした信書、削除した信書の一部、信書の抹消部分の複製を釈放時に引き渡さない処分
⑫面会・電話通信・信書の検閲のための通訳・翻訳費用を負担させる処分
⑬懲罰
⑭反則行為に関わる物を国庫に帰属させる処分
⑮反則取調べのための隔離
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⑥ この問題をどう考えるにしろ、執行中の懲罰案件であると分った時点で矯正管区長が機械的に懲罰の執行停止をすることが門前払いを減らす必須条件である。しかし、仮にそのような運用をしても、その時点では懲罰事案のうち相当数が執行を終了しているであろうし、実質審査と門前払いの境目が偶然に左右されすぎて、これでは制度に対する信頼を確保するには決定的に不十分である。懲罰執行中に申請をする困難さの問題も残る。
⑦ そもそも、法律には素人であり、閉居罰執行中で誰とも相談できない受刑者に対して、行政法の専門家がするような「取消しの利益」の議論や執行停止に関する細かな争訟技術を要求すること自体が、非現実的かつ不当である。新法が懲罰を不服申立ての対象として宣言しながら、実際にはそのほとんどを門前払いする運用を続けるなら、それは「立法詐欺」と言われても仕方がない。
 「立法詐欺」のような運用によって受刑者が抱く失望感、無力感、社会や人間一般への不信感は、「改善更生の意欲の喚起」(法14条「受刑者の処遇の原則」)とは全く逆の、自暴自棄や精神的荒廃へと受刑者を追いやるであろう。その意味でも、百害あって一利もないこのような誤った法解釈・運用は直ちに改められなければならない。

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2006年9月20日 (水)

受刑者処遇法の運用その4 府中刑務所で「華美」を理由としたメガネの使用不許可が頻発

 今年5月の受刑者処遇法施行を前後して、府中刑務所で「華美」を理由にメガネの使用を不許可とする事例が頻発している。1つ目が不許可になり、作り直したものも不許可にされた事例も複数ある。メガネは安いものでも何万円もするものなので、収入の道を断たれている受刑者や働き手が減ったその家族にとって、メガネを作り直すだけで相当な経済的負担である。
 受刑者処遇法の19条は、次のように規定し、メガネ等の補正器具を他の物品と区別して、原則自弁としている。
「(補正器具等の自弁等)
第十九条  受刑者には、次に掲げる物品については、刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合を除き、自弁のものを使用させるものとする。
一  眼鏡その他の補正器具
二  第六十九条第一項に規定する自己契約作業を行うのに必要な物品
三  信書を発するのに必要な封筒その他の物品
四  第八十五条第一項の規定による外出又は外泊の際に使用する衣類その他の物品
五  その他法務省令で定める物品
2  前項各号に掲げる物品について、受刑者が自弁のものを使用することができない場合であって、必要と認めるときは、その者にこれを貸与し、又は支給するものとする。」 メガネ等の補正器具が原則自弁とされたのは、視力や聴力などが個人の特性に合った補正器具が必要と認めたからであろう。まさか、国費節約のためだけではあるまい。2号、3号、4号の物品についてもある程度個性豊かな物を使わせようとする配慮と考えられる。
 自弁の原則は、同時に官給よりも画一性を緩和することを含んでいる。そうではなく自弁しても使わせないというのでは、自弁原則を採用した意味がない。そうであれば、メガネ等の補正器具については、19条所定以外の通常の私物以上に、緩やかに使用が認められてよいはずである。
 最近は一般社会でもメガネのデザインは華やかになっている。新受刑者が、一般社会で使っていたメガネをそのまま使用するのは自然なことで、誰も下獄するに当たって地味なメガネを新調しようなどとは思わないし、ことさらそんなことを強いるのも妥当ではあるまい。他方、メガネのデザインの「華美」さなど所詮はたかがしれており、いちいち目くじらを立てることもあるまい。「一般社会で使われているメガネは華美すぎて刑務所にふさわしくない」という主張を固持することは、「下獄するに当たっては刑務所用のメガネを新調せよ」と無理な注文を付けているのに等しくはないか。
 確かに、奇抜なデザインであったり、眼病でもないのに視線が判別できないほど色の濃いレンズを使うのは、施設の管理運営上支障があるかもしれない。それは禁止されてもやむをえない。しかし、メーカーのロゴが入っていたり、紫外線カットのための薄い色がついても、普通に市販されている程度のものであれば、施設の管理運営や受刑者の改善更生の観点からも問題にするに足りないのではないか。
 法務省は受刑者処遇法の制定時に、メガネ等の補正器具を自弁としたことを、受刑者の権利水準を高めるものと誇らし気に語っていた。それが、メガネ等に補正器具の自弁に権利性を与えたものではなく、単なる国費節約のためであったかのような運用をされたのでは、余りにも情けない「立法詐欺」と言われても仕方あるまい。府中刑務所はメガネ等の補正器具に対する「華美」を理由とする厳しい規制をやめ、受刑者処遇法19条の趣旨に沿った運用に改めるべきである。

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2006年9月15日 (金)

受刑者処遇法の運用その3 新法運用の最大の争点になるか? 制限区分4種による隔離処分の脱法

 受刑者処遇法以前には、全受刑者の約4%が継続的な昼夜独居(旧監獄法施行規則47条の「戒護のための独居」、「保安上独居」「処遇上独居」ともいう)の状態に置かれていた。このうち20人以上が10年を超えており、最長では40年近く昼夜独居拘禁が続いている人もいた。
 昼夜独居拘禁にしなければならない受刑者というと、いかにも「暴れ者」のようなイメージを持つが、実際には、刑務所を相手に訴訟を起こすと必ずと言っていいほど昼夜独居にされるなど、旧法下ではかなりルーズに昼夜独居が多用されていた。
 受刑者処遇法では、旧監獄法施行規則47条の「戒護のための独居」に相当する「隔離」の処分をその要件を法律で明文化した。また、更新の上限こそ規定しなかったものの、原則的な隔離期間を従来の6か月から3か月に短縮し、更新の期間も従来の3か月ごとを1か月ごとに短縮した。
 これによって、従来のように刑務所相手の訴訟を起こしただけで昼夜独居にされるような事例はなくなり、昼夜独居自体が減少することが期待された。
 ところが、新法施行以降、確かに隔離処分になった受刑者の話はあまり聞こえてこないものの、相変わらず昼夜独居のままだったり、新たに昼夜独居にされた受刑者が多い。中には、この昼夜独居について正規の不服申立手続である「審査の申請」をしたら、「隔離ではないので審査の対象外」と明確に却下された人もいる。
 おそらく、受刑者処遇法で累進処遇制度に代わる個別的処遇制度の一環として導入された「4種の制限区分・5類の優遇区分」のうち制限区分4種が新たな昼夜独居拘禁として活用されているのであろう。確かに、今年5月24日の受刑者処遇法施行の前日に公布された受刑者処遇法施行規則(法務省令)には、制限区分4種は「居室棟内で」処遇するとなっており、同日発出された矯正局長通達では(被隔離者以外の)「昼夜居室処遇者」などという新たな範疇まで作り出している。
 しかし、旧法下において継続的な昼夜独居拘禁の根拠は旧監獄法施行規則47条以外にはない( 衆議院植田至紀議員の「昼夜間独居に関する質問」に対する答弁書2000年12月26日、別表一を参照のこと)。また、原則6か月、3か月ごとに更新という期間制限も旧法下では旧規則47条の昼夜独居だけではあらゆる独居拘禁に適用される規定であった。したがって、受刑者処遇法も53条の「隔離」以外には継続的な昼夜独居はありえないとの前提で立法されている。期間制限も53条の「隔離」や109条の反則取調べのための「隔離」など「隔離」の種類に応じて規定している。矯正局長通達にある制限区分4種の「指定基準」は「生活態度の不良」など、当然ながら53条の隔離のニ要件とは比較にならないほどルーズである。受刑者処遇法が、このようにルーズな要件で、期間制限もない、不服申立手段もない昼夜独居制度を新たに創設したとは到底考えられない。
 矯正局長通達では被隔離者以外の「昼夜居室処遇者」には運動の集団実施などで他の受刑者と接触する機会を作るべきことが規定されている。これは従来の厳正独居に対する緩和独居に相当するものだが、緩和独居と厳正独居の違いは採るに足りない。集団処遇が厳正独居が雲泥の違いだとすれば、厳正独居と緩和独居の違いなど泥の濃淡の違いでしかない。制限区分4種の昼夜独居化は、隔離の要件、効果(理由告知、期間制限、審査の申請の可否など)の脱法行為であり、到底許されるものではない。
 今後、旧法下で4%だった昼夜独居者が隔離と制限区分4種にどう分化していったか、統計的にも明らかにされるであろう。実態が明らかになるにつれて、新法運用の最大の争点になるかもしれない。

昼夜独居への不服申立マニュアル

10年以上の長期昼夜独居の追跡調査(全4回)

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2006年7月26日 (水)

受刑者処遇法の運用その2 旧態依然の懲罰手続

 旧監獄法が懲罰の要件と手続を法定していなかったのに対して、受刑者処遇法はこれを法定した。しかし、懲罰に関する限り、受刑者処遇法施行後も目立った変化はないようである。
 受刑者処遇法110条は、「受刑者に懲罰を科そうとする場合には、法務省令に定めるところにより、その聴取をする3人以上の職員を指名した上、その受刑者に対し、弁解の機会を与えなければならない。」と規定している。権力的処分に関する聴聞手続という当然の大原則を懲罰について初めて法定したものであるが、これについては、従来から行われている懲罰審査会を想定したものとされている(『刑政』117巻3号、2006年3月、富山聡)。
 しかし、従来から懲罰審査会は「受刑者の弁解を聴く」(聴聞)とは名ばかりで、受刑者一人を所長(又は次長)以下の幹部職員が取り囲んで罵詈雑言を浴びせ、「言葉によるリンチ」を行う場というのが実態であった。毎回毎回そうではなかったにせよ、そういうケースが少なくなかったのは事実である。筆者もそれは体験している。
 懲罰審査会のこのような実態は、受刑者処遇法施行以降も続いているらしい。九州地方の某刑務所からこのような懲罰審査会についての訴えが届いている。「弁解の機会」と言いながら「リンチの場」に引き出し、「これが権利」と言いながら暴言を浴びせかける、これほどの不条理と屈辱はない。しかも、若い看守の逸脱行為ではなく、所長以下の幹部が顔をそろえて組織的にやっているのである。
 これでは、若い受刑者など「刑務官とは何て下劣なやつらだ」「言ってることとやってることが違うではないか」「国家も最後は、やくざと口調も手口でくるのか」と実感し、「改善更生」どころか「犯罪性向」を強めてしまうであろう。
 しかし、懲罰手続が法定された以上、このような実態はもはや通用しないし、させてはいけない。裁判所も不服申立審査会(調査検討会)も、受刑者に寄ってたかって罵詈雑言を浴びせるだけの懲罰審査会をさすがに「弁解の機会を与えた」とは認めないであろう。刑務所当局も法務省矯正局も懲罰手続が法定されたことの意味を、よくよく考え直し、早急に是正に動くべきである。

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2006年7月25日 (火)

受刑者処遇法の運用その1 友人との外部交通はかなり定着

 受刑者処遇法の施行(5月24日)から2か月がたった。この間、文通の相手方が新法93条のの条文どおり原則無制限となるのかどうか、また、新法89条2項で裁量的に認められた友人との面会が実際どの程度広く認められるのか、最も注目された。この点については、友人との面会、文通を広く認める運用がほぼ定着していると言ってよい。
 知る限りでは、文通が認められなかった例としては、旭川刑務所で受刑中に知り合った出獄者から受刑者への手紙が交付されなかった1件だけである。これは通達で文通を認めない場合として暴力団員と受刑者が挙げられているので、出獄者も受刑者に準じて不許可にしたものと推測される。しかし、受刑者等についても一律に判断すべきでなく、本人との関係で個別具体的に判断すべきことが通達にも述べられてはいる。
 面会についても、これまで受刑者本人の意に反して認められなかった例は聞いていない。もっとも、信書と違って友人との面会は裁量的許可なので、今後、通達で明記されている暴力団員以外にどこまで不許可になるケースも出てくるのか注目される。受刑者も手獄者も高齢化しており、友人の支えなしに社会復帰がますます困難になっていることを考えると、面会に関しても比較的緩やかな運用がこのまま維持されることが望まれる。

友人との面会文通が確認できた刑務所(統一獄中者組合のWebSiteより)

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2006年6月 9日 (金)

新施行規則の解説その1 累進処遇の廃止と個別的処遇

 受刑者処遇法(刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律)が5月24日から施行された。その前日の官報で受刑者処遇法施行規則(法務省令)などの関係細則が公表され、受刑者処遇法の運用の全貌が少しずつ明らかになってきた。
 実際には、新法の施行と同時に100を超える訓令・通達が発出されているが、訓令・通達はホームページなどで簡単に入手できる形では公表されていない。これは従来からもそうで、非公開ではないが数が多いなどの理由によると思われる。『矯正実務六法』(東京法令出版)などの刊行を待つのが無難である。

 そこでとりあえず、新施行規則の概要をまとめてみた。第1回は累進処遇の廃止と個別的処遇の導入である。旧監獄法下では受刑者の大多数を占める懲役受刑者には、行刑累進処遇令が適用され、この累進処遇制度が刑務所生活の基本を規律してきた。受刑者処遇法では、84条2項で「矯正処遇は、処遇要領(矯正処遇の目標並びにその基本的な内容及び方法を受刑者ごとに定める矯正処遇の実施の要領をいう。・・・)に基づいて行うものとする。」とされている。これが、いわゆる個別的処遇を規定した条項であり、これは従来の累進処遇制度とは相容れない。そこで、新施行規則で累進処遇に代わってどのような制度が打ち出されるのか注目されていた。

 新施行規則で採用された制度は、4種の制限区分と5類の優遇区分を組み合わせた制度である。制限区分は要警備度を基準にした長期的な分類であり、優遇区分は半年ごとに評価される受刑態度による分類である。これは一見すると欧米にも見られる要警備度に基づく行動制限と個別的処遇を組み合わせた制度への転換ようにも見えるが、累進処遇と実質上変わらない運用も可能である。また、特に優遇区分(優遇措置)については、運用次第では担当看守の恣意による受刑者支配を招く危険もある。今後の運用を注視する必要がある。

詳しい解説はこちら

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2006年6月 2日 (金)

受刑者処遇法による外部交通(信書発受)の運用

 5月24日に受刑者処遇法が施行され、親族以外との面会・文通が拡大された。これが法文どおり実施されるかが注目されていたが、本日までに福島刑務所、岐阜刑務所、岡山刑務所、徳島刑務所の受刑者から親族以外、しかも団体宛てに手紙が届いた。このほか、山形刑務所の受刑者から親族以外の個人宛てに手紙が届いたことが確認できている。
 受刑者処遇法93条は受刑者の信書の発受を原則自由とし、95条で「犯罪性のある者その他受刑者が信書を発受することのより、刑事施設の規律及び秩序を害し、又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者(受刑者の親族を除く)」は例外的に禁止できるとされている。95条を拡大解釈することによって、受刑者と親族以外の文通が旧法時代とさして変わらないまでに極限される懸念もあった。
 しかし、受刑者処遇法は法文どおりに信書の発受を原則自由とする方向で運用されつつあることが、明らかになってきた。この傾向が全国の刑務所で定着し、受刑者の幅広い外部交通権が確立することを期待する。
 このような新法の運用については、今年3月23日に熊本刑務所国賠訴訟で最高裁第1小法廷が行った原告一部勝訴の画期的な判決の影響も無視できない。

この判決の詳しい解説はこちら。

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2006年6月 1日 (木)

未決拘禁法案 参議院法務委員会で可決、明日の本会議で成立の見通し

 本日午前の参議院法務委員会で未決拘禁法案(「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律」案)が与党の賛成多数で可決された。この法案は明日の参議院本会議で可決成立する見通し。この法案では100年前から廃止が課題になっていた代用監獄制度が存続させられており、この点の修正なしに政府案がそのまま可決されたことは、極めて遺憾である。
 本日の参議院法務委員会では、各党1名ずつが最後の質問を行った後、民主党の修正案が提案された。採決では、まず民主党の修正案が採決され民主党・共産党(おそらく国民新党も)が賛成したが(社民党は法務委員がいない)、賛成少数で否決された。その後、内閣提出の原案が自民党・公明党の賛成多数で可決された。原案可決の後、法務委員会の全会派共同提案による附帯決議が全会一致で可決された。

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2006年5月26日 (金)

訂正 電話通信、外部通勤、外出・外泊の条件は意外と広かった

 5月24日付の記事で、新しい受刑者処遇法施行規則で予想より悪かった点として、72条で「電話による通信が厳しく制限された」という趣旨を書いたが、この解釈は誤りで電話通信の許される範囲は意外と広いことが判明した。51条の外部通勤、59条の外出・外泊の要件についても同じ解釈の誤りがあり、実際の条件はもっと緩やかであったことが判明した。謹んでお詫びして訂正する。
 新施行規則の72条の文言は以下のとおりである。
「第七十二条
法第百一条第一項に規定する法務省令で定める事由は、次に掲げる事由とする。
一 法第六十五条第二項の規定により開放的施設において処遇を受けていること。
二 第一種又は第二種の制限区分に指定されていること。
三 法第六十二条第一項第二号に定める指導を受けていること。」
 5月24日付の記事では、この1号から3号までを「かつ」の関係と読み、このすべてを満たしていないと電話通信が認められないと解釈した。しかし、正しくは、この各号の関係は「または」であり、1号から3号のいずれかを満たしていれば電話通信が認められうるということである。
 なぜなら、72条の基になっている法101条1項は「刑事施設の長は、受刑者に対し、第六十五条第二項の規定により開放的施設において処遇を受けていることその他の法務省令で定める事由に該当する場合において、その者の改善更生又は円滑な社会復帰に資すると認めるときその他相当と認めるときは、電話その他政令で定める電気通信の方法による通信を行うことを許すことができる。」と規定しており、「開放的施設において処遇を受けていること」と法務省令(新施行規則)が定める「その他」の事由は並立の関係とされているからである。新施行規則42条が「法第六十五条第二項の規定による開放的施設での処遇は、第一種の制限区分に指定されている受刑者について行うことができるものとする。」と規定していることからも、このように解釈しないと72条の1号と2号は矛盾する。
 そうなると、電話通信は制限区分第二種でも許可される場合があり、釈放2週間前なら全員に可能性があるということになり、その範囲はかなり広がることになる。歓迎すべき傾向であり、今後さらに広げていってほしい。
 同じことが、51条の外部通勤の三要件、59条の外出・外泊の三要件についても言える。すなわち、外部通勤が許されるためには、51条の1号「開放的施設において処遇を受けていること」、2号「第一種又は第二種の制限区分に指定されていること」、3号「仮釈放を許す決定がされていること」のすべてを満たす必要はなく、このうちの一つに該当すれば、外部通勤の対象者になりうるということである。外出・外泊も2号が「第一種の制限区分に指定されていること」という要件が外部通勤よりやや厳しいだけで、これに該当しなくても開放的処遇を受けているか(1号)仮釈放許可の決定がされていれば(3号)対象になりうるということである。
 施行規則の詳細な内容はこちら

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