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2006年9月20日 (水)

受刑者処遇法の運用その4 府中刑務所で「華美」を理由としたメガネの使用不許可が頻発

 今年5月の受刑者処遇法施行を前後して、府中刑務所で「華美」を理由にメガネの使用を不許可とする事例が頻発している。1つ目が不許可になり、作り直したものも不許可にされた事例も複数ある。メガネは安いものでも何万円もするものなので、収入の道を断たれている受刑者や働き手が減ったその家族にとって、メガネを作り直すだけで相当な経済的負担である。
 受刑者処遇法の19条は、次のように規定し、メガネ等の補正器具を他の物品と区別して、原則自弁としている。
「(補正器具等の自弁等)
第十九条  受刑者には、次に掲げる物品については、刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合を除き、自弁のものを使用させるものとする。
一  眼鏡その他の補正器具
二  第六十九条第一項に規定する自己契約作業を行うのに必要な物品
三  信書を発するのに必要な封筒その他の物品
四  第八十五条第一項の規定による外出又は外泊の際に使用する衣類その他の物品
五  その他法務省令で定める物品
2  前項各号に掲げる物品について、受刑者が自弁のものを使用することができない場合であって、必要と認めるときは、その者にこれを貸与し、又は支給するものとする。」 メガネ等の補正器具が原則自弁とされたのは、視力や聴力などが個人の特性に合った補正器具が必要と認めたからであろう。まさか、国費節約のためだけではあるまい。2号、3号、4号の物品についてもある程度個性豊かな物を使わせようとする配慮と考えられる。
 自弁の原則は、同時に官給よりも画一性を緩和することを含んでいる。そうではなく自弁しても使わせないというのでは、自弁原則を採用した意味がない。そうであれば、メガネ等の補正器具については、19条所定以外の通常の私物以上に、緩やかに使用が認められてよいはずである。
 最近は一般社会でもメガネのデザインは華やかになっている。新受刑者が、一般社会で使っていたメガネをそのまま使用するのは自然なことで、誰も下獄するに当たって地味なメガネを新調しようなどとは思わないし、ことさらそんなことを強いるのも妥当ではあるまい。他方、メガネのデザインの「華美」さなど所詮はたかがしれており、いちいち目くじらを立てることもあるまい。「一般社会で使われているメガネは華美すぎて刑務所にふさわしくない」という主張を固持することは、「下獄するに当たっては刑務所用のメガネを新調せよ」と無理な注文を付けているのに等しくはないか。
 確かに、奇抜なデザインであったり、眼病でもないのに視線が判別できないほど色の濃いレンズを使うのは、施設の管理運営上支障があるかもしれない。それは禁止されてもやむをえない。しかし、メーカーのロゴが入っていたり、紫外線カットのための薄い色がついても、普通に市販されている程度のものであれば、施設の管理運営や受刑者の改善更生の観点からも問題にするに足りないのではないか。
 法務省は受刑者処遇法の制定時に、メガネ等の補正器具を自弁としたことを、受刑者の権利水準を高めるものと誇らし気に語っていた。それが、メガネ等に補正器具の自弁に権利性を与えたものではなく、単なる国費節約のためであったかのような運用をされたのでは、余りにも情けない「立法詐欺」と言われても仕方あるまい。府中刑務所はメガネ等の補正器具に対する「華美」を理由とする厳しい規制をやめ、受刑者処遇法19条の趣旨に沿った運用に改めるべきである。

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2006年9月15日 (金)

受刑者処遇法の運用その3 新法運用の最大の争点になるか? 制限区分4種による隔離処分の脱法

 受刑者処遇法以前には、全受刑者の約4%が継続的な昼夜独居(旧監獄法施行規則47条の「戒護のための独居」、「保安上独居」「処遇上独居」ともいう)の状態に置かれていた。このうち20人以上が10年を超えており、最長では40年近く昼夜独居拘禁が続いている人もいた。
 昼夜独居拘禁にしなければならない受刑者というと、いかにも「暴れ者」のようなイメージを持つが、実際には、刑務所を相手に訴訟を起こすと必ずと言っていいほど昼夜独居にされるなど、旧法下ではかなりルーズに昼夜独居が多用されていた。
 受刑者処遇法では、旧監獄法施行規則47条の「戒護のための独居」に相当する「隔離」の処分をその要件を法律で明文化した。また、更新の上限こそ規定しなかったものの、原則的な隔離期間を従来の6か月から3か月に短縮し、更新の期間も従来の3か月ごとを1か月ごとに短縮した。
 これによって、従来のように刑務所相手の訴訟を起こしただけで昼夜独居にされるような事例はなくなり、昼夜独居自体が減少することが期待された。
 ところが、新法施行以降、確かに隔離処分になった受刑者の話はあまり聞こえてこないものの、相変わらず昼夜独居のままだったり、新たに昼夜独居にされた受刑者が多い。中には、この昼夜独居について正規の不服申立手続である「審査の申請」をしたら、「隔離ではないので審査の対象外」と明確に却下された人もいる。
 おそらく、受刑者処遇法で累進処遇制度に代わる個別的処遇制度の一環として導入された「4種の制限区分・5類の優遇区分」のうち制限区分4種が新たな昼夜独居拘禁として活用されているのであろう。確かに、今年5月24日の受刑者処遇法施行の前日に公布された受刑者処遇法施行規則(法務省令)には、制限区分4種は「居室棟内で」処遇するとなっており、同日発出された矯正局長通達では(被隔離者以外の)「昼夜居室処遇者」などという新たな範疇まで作り出している。
 しかし、旧法下において継続的な昼夜独居拘禁の根拠は旧監獄法施行規則47条以外にはない( 衆議院植田至紀議員の「昼夜間独居に関する質問」に対する答弁書2000年12月26日、別表一を参照のこと)。また、原則6か月、3か月ごとに更新という期間制限も旧法下では旧規則47条の昼夜独居だけではあらゆる独居拘禁に適用される規定であった。したがって、受刑者処遇法も53条の「隔離」以外には継続的な昼夜独居はありえないとの前提で立法されている。期間制限も53条の「隔離」や109条の反則取調べのための「隔離」など「隔離」の種類に応じて規定している。矯正局長通達にある制限区分4種の「指定基準」は「生活態度の不良」など、当然ながら53条の隔離のニ要件とは比較にならないほどルーズである。受刑者処遇法が、このようにルーズな要件で、期間制限もない、不服申立手段もない昼夜独居制度を新たに創設したとは到底考えられない。
 矯正局長通達では被隔離者以外の「昼夜居室処遇者」には運動の集団実施などで他の受刑者と接触する機会を作るべきことが規定されている。これは従来の厳正独居に対する緩和独居に相当するものだが、緩和独居と厳正独居の違いは採るに足りない。集団処遇が厳正独居が雲泥の違いだとすれば、厳正独居と緩和独居の違いなど泥の濃淡の違いでしかない。制限区分4種の昼夜独居化は、隔離の要件、効果(理由告知、期間制限、審査の申請の可否など)の脱法行為であり、到底許されるものではない。
 今後、旧法下で4%だった昼夜独居者が隔離と制限区分4種にどう分化していったか、統計的にも明らかにされるであろう。実態が明らかになるにつれて、新法運用の最大の争点になるかもしれない。

昼夜独居への不服申立マニュアル

10年以上の長期昼夜独居の追跡調査(全4回)

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