昼夜独居(隔離処分と制限区分第4種)

【解 説】

1 居室の指定

 受刑者の居室の種類については単独室(独居)と共同室(雑居)が考えられる。他方、受刑者の処遇方法の重要な要素として、他の受刑者との接触の許容度がある。

 旧法の下では、この2つの観点を組み合わせて「昼夜独居」「夜間独居」「雑居」の三種類の中から「分類審査会」が「分類級」や「作業種」などとともに「居房配置」として選択・指定していた。(「受刑者分類規程」(大臣訓令))。

 新法の下でも、受刑者ごとに作成される「処遇要領」(61条2項)の一環として、従来どおり「昼夜独居」「夜間独居」「雑居」の三種類の中から居室が選択・指定されることになると思われる。居室の理想的な形態は「夜間独居」だが、工場や居住棟内での交談禁止が厳しい日本では、他人との交談の機会を求めて「雑居」を希望する受刑者も多い。いずれにしろ、独居拘禁の弊害が問題になるのは「昼夜独居」の場合である。

2 「昼夜独居」の法的根拠をめぐる新法・旧法の違い

 旧法15条は被収容者の居室について独居を原則とし、旧規則も独居原則の観点から独居にできる場合とその優先順位を詳細に規定していた。一方、懲役受刑者に適用される旧行刑累進処遇令ではこれとは逆に雑居原則をとり、4級と3級の受刑者は原則雑居としていた(累令29条)。

 結局、雑居が原則である懲役受刑者を「昼夜独居」にするためには、旧規則で独居にできるとされた場合のどれかに当てはめるほかなかった。そのような規定としては保安上独居(旧規則47条)以外にはなかった。旧規則は独居拘禁一般につき期間制限や医師の巡視など特別の規定を置いていた。しかし、保安上独居以外の独居(考査期間中独居、取調中独居、釈放前独居など)はもともと短期間を予定していたから、期間制限等の独居拘禁一般に関する特別の規定が適用されるのは事実上、保安上独居に限られていた。

 新法では、旧規則の保安上独居に相当する「隔離」が明文化され(法53条)、要件や期間制限、不服申立に関する規定が不十分ながら整備された。これらの規定は旧法の保安上独居に適用されていた規定を踏襲しており、行刑改革会議でも国会審議でも新法における「昼夜独居」とはこの「隔離」に限られるという理解が前提となっていた。

 ところが、新法施行日(2006年5月24日)の前日に官報で公表された新規則では、累進処遇に代わる個別的処遇の基本として「4種の制限区分と5類の優遇区分」が規定され、このうち制限区分の第4種の処遇は「居室棟内で行うものとする」とされた。「受刑者の生活及び行動の制限の緩和に関する訓令の運用について」(矯正局長通達)でも、法53条等の「隔離」以外の「昼夜居室処遇者に対する処遇上の配慮事項」として、「1月につき1回以上、グループカウンセリング、集団討議(複数でビデオ視聴させ、感想を述べ合わせる程度でも可。)、運動の集団実施等の方法により、他の受刑者と接触する機会を与えること。」と規定されている。これは主として制限区分第4種の受刑者を念頭に置いた規定である。

3 隔離と制限区分第4種の要件・効果

 

隔離

制限区分第4種

要件(基準)

一 他の被収容者と接触することにより刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがあるとき。

二 他の被収容者から危害を加えられるおそれがあり、これを避けるために他に方法がないとき。

(法53条1項)

次のいずれかに該当する場合

ア 犯罪の責任の自覚及び悔悟の情並びに改善更生の意欲の程度が著しく低いこと。

イ 正当な理由なく作業を怠るなど勤労意欲が著しく低いこと。

ウ 集団処遇が困難な状況にあること。

エ 生活態度が不良な状況に継続し、又は継続する見込みであること。

(矯正局長通達)

決定手続

隔離、更新とも処遇審査会の意見を聴いて施設長が決定(大臣訓令)。

隔離、更新に際して、その旨及び根拠規定を告知(大臣訓令)。隔離の具体的理由も告知して差し支えない(矯正局長通達)。

指定、変更とも処遇審査会の意見を聴いて施設長が決定(大臣訓令)。

指定、変更に際して、その旨を告知(大臣訓令)。

期間制限

原則3カ月、1カ月ごとに更新。必要がなくなったら直ちに解除。

期間制限なし。

処遇場所

次項の場合を除いて昼夜とも居室(法53条1項)

昼夜とも居室棟内(規則41条5項)

他の受刑者との接触

運動、入浴、面会、健康診断、診療などの場合(規則28条)

左のほか、1月1回以上のグループカウンセリング、集団討議、運動の集団実施等(矯正局長通達)

特別の措置

3カ月に1回以上の医師の意見の聴取(法53条3項)。

隔離の理由を除去するための相談助言などをする(大臣訓令)。

 

不服申立手段

審査の申請(法112条1項7号)が可。

審査の申請は不可。苦情の申出のみ。

【争点と対応のポイント】

「いままで雑居(夜間独居)だったのに、昼夜独居にされた。雑居(夜間独居)に戻るにはどうすればよいか?」「昼夜独居が長期間続いているが、どうすれば雑居(夜間独居)に移れるか?」

1 隔離なのか否かを確認する

 まず、隔離によって昼夜独居になったのか、制限区分第4種に指定されたため昼夜独居になったのかを確認する。どちらの場合にも本人に告知があり、隔離の場合は3カ月後(その後は1カ月ごと)に更新がある。

2 隔離の場合

① 審査の申請(→再審査の申請→不服審査調査検討会)

 隔離の場合は、処分が告知されてから30日以内なら本人から矯正管区長への審査の申請ができる。この期間内ならまず審査の申請を追求すべきである。審査の申請が棄却されたら、さらに法務大臣への再審査の申請を行う。再審査の申請を却下・棄却する場合には必ず第三者機関である不服審査調査検討会のチェックを受けることになっているので、この手続の利用価値はある。

 法112条6項が審査の申請の対象を「第53条第1項の隔離」としているので、1カ月ごとの更新について審査の申請ができるかは問題である。矯正当局はこれを否定することが予想される。しかし、隔離の原因事実は変化するから更新は実質上新たな隔離処分ともいえ、何年更新されても再度の審査の申請ができないのでは明らかに不当である。隔離が長期間続く場合は、最新の更新を新たな隔離処分とみなして審査の申請を行い、不適法却下とされたら、再審査の申請を行ってこの点につき不服審査調査検討会に問題提起することも考えられる。

② 隔離処分の取消訴訟(行政訴訟)

 しかし、審査の申請は30日以内に本人が申請しなければならないので、事実上不可能な場合が多い。この場合に隔離を解除させる正面からの法的手段は、隔離処分の取消訴訟である。旧法下では刑務所側が「保安上独居は分類に基づいた居室指定にすぎず、受刑者にとって必ずしも不利益ではない」として処分性を争ってくることがあったが、新法では隔離及びその更新の処分性は明らかである。審査対象につき列挙主義をとる審査の申請と異なり、概括主義をとる取消訴訟では更新処分も審判対象となることは明らかだから、処分を知った日から6カ月という出訴期間の制限も、更新が続いている限り事実上問題にならない。

 旧法下の裁判例を見ると、受刑者側が勝訴した例は皆無である。その理由は、裁判所が施設長の裁量権を広く認めてきたことにある。新法は旧法とは異なり、隔離の要件を明文で規定したので旧法よりも施設長の裁量権は理論上狭まった。とはいえ、特に法53条1項1号の「他の被収容者と接触することにより刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがあること」という要件についての当てはめの裁量権を、裁判所が施設長に広く認めることも予想され、訴訟で勝訴する可能性が劇的に改善されたとはいえない。

 行政訴訟では提訴後に一時的に隔離が解除された場合の訴えの利益の問題など、特有の技術的問題が生ずるので、これを回避するために違法な隔離から生ずる損害賠償を求めて国家賠償請求訴訟を起こし、間接的に隔離の違法性を争う方法もある。

 旧法下の裁判例では受刑者側が第一審で勝訴したものが2件あるが、いずれも控訴審で覆されている。その理由は、行政訴訟の場合と同じく裁判所が施設長の裁量権が広く認めたからである。その間の事情と今後の見通しは行政訴訟の場合と同じである。

④ 苦情の申出、視察委員会への問題提起、事実上の交渉

 このように、訴訟で昼夜独居を解除させるのは、依然として狭き門である。したがって、まずは、本人から施設長への苦情の申出、法務大臣への苦情の申出、視察委員会への問題提起などを有効に駆使しながら、粘り強い交渉によって昼夜独居の解除を追求することが必要である。その際には、隔離する具体的な理由を開示させ、その事由が解消していることを家族とも協力しながら刑務所側に説得することがポイントとなる。これは訴訟等の準備活動としても重要である。

3 制限区分第4種の場合

 制限区分第4種の指定は、審査の申請の対象でなく、取消訴訟を起こすにも処分性が旧法の「保安上独居」以上に争われるであろう。また、隔離とは異なり制限区分の基準については新法にも明文の規定はもちろんないので、行政訴訟でも国賠訴訟でも施設長の裁量権は旧法の「保安上独居」以上に広く認められる可能性がある。訴訟で勝訴するのは相当に困難であろう。したがって、苦情の申出等を駆使して粘り強く交渉することが、隔離の場合以上に必須である。

 すでに述べたように新法の制定過程では法53条の隔離こそ、旧法の昼夜独居に代わるものという理解が不動の前提であった。期間制限、医師の巡回など旧規則の独居拘禁全般に関する規制が法53条に引き継がれていることからも、それは明らかである。法務省が新法における隔離と制限区分第4種の処遇の違いをいかに強調しようとも、制限区分第4種の処遇が「昼夜居室処遇」であり独居拘禁であることは、法務省自身が認めている。もし、旧法が独居拘禁全般について適用していた期間制限等の規定が、新法では「昼夜居室処遇」の一部である隔離にしか適用されなくなったとしたら、旧法からの大後退であり、立法上の詐欺に等しい大問題である。

 この点を明らかにし、新法の不備を修正する法改正を促すためにも、制限区分第4種にも隔離と同様の規制を行うべきことを主張して、正規の不服申立手段をとることも考えてよい。

【事例・裁判例】