新施行規則と受刑者処遇法の運用

 受刑者処遇法(刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律)が5月24日から施行された。その前日の官報で受刑者処遇法施行規則(法務省令)などの関係細則が公表され、受刑者処遇法の運用の全貌が少しずつ明らかになってきた。

 実際には、新法の施行と同時に100を超える訓令・通達が発出されているが、訓令・通達は従来からも簡単に入手できる形では公表されていないので、本稿は施行規則の内容紹介にとどめる。

1 累進処遇に代わる4種5類の個別的処遇

(1) 個別的処遇の意味

 旧監獄法下では懲役受刑者には行刑累進処遇令が適用され、1級から4級までの累進処遇制が行われていた。これが事実上、旧法下での受刑者処遇の基本になっていた。新法では、累進処遇制が廃止され、禁錮刑を含む全受刑者に個別的処遇が実施される。受刑者処遇法でも「個別的処遇」という概念は使っていないが、法61条2項で「矯正処遇は、処遇要領(矯正処遇の目標並びにその基本的な内容及び方法を受刑者ごとに定める矯正処遇の実施の要領をいう。以下この条において同じ。)に基づいて行うものとする。」としているので、この受刑者ごとの処遇要領に基づく処遇を「個別的処遇」と呼んでいる。

 個別的処遇要領に基づく矯正処遇には、「作業」や「改善指導」、「教科指導」なども含まれるが、受刑生活のベースとなるのが法65条の「制限の緩和」と法66条の「優遇措置」であり、これが旧法下の累進処遇制に代わることになる。

(2) 要警備度の基づく「制限区分」

 法65条の「制限の緩和」に対応して、規則40条は、「開始時指導」が終了した受刑者に、「法14条〔引用者注:受刑者処遇の原則〕の目的を達成する見込み」の評価に応じて第1種~第4種の「制限区分」を指定し、定期的及び随時に指定を変更するとした。

これは欧米で行われている要警備度に基づく分類に近いものと思われる。実際、「制限区分」による違いは、居室・処遇場所の開放度と警備の厳重度である(規則41条)。

・第1種の居室 「収容を確保するため通常必要とされる設備又は措置の全部又は一部を設けず、又は講じない」(つまり部屋に鍵をかけない等)。

・第2種又は第3種の居室 「刑事施設の規律及び秩序の維持に支障を生ずるおそれがない場合において、処遇上適当と認めるときに限り」、部屋に鍵をかけない等できる。

・第1種又は第2種の処遇場所 居室棟外(工場等)、場合により「刑事施設の外」

・第3種の処遇場所 居室等外(工場等)

・第4種の処遇場所 居室棟内

・身体・居室の検査、面会の立会い等は原則として制限区分に応じた頻度・態様で行う。

・開放的施設での処遇は第1種に限る(規則42条)

(3) 半年ごとの受刑態度の評価に基づく「優遇区分」

 これとは別に、法66条の「優遇措置」に対応して「優遇区分」というものが設けられた。刑の執行開始から6か月以上たった受刑者について、1年を4~9月と10月~3月に分けて「評価期間」とし、この半年間の受刑態度(反則行為の有無を含む)を基準に、次期について第1類~第5類の「優遇区分」を指定する。

ただし、受刑開始6か月後に最初に指定される「優遇区分」は、それまでに懲罰を受けた者は第5類、それ以外は第3類とされる。さらに、第3類からスタートした者も、次の半年間に懲罰を科されると必ず第5類に落とされる。つまり、受刑開始後1年間に懲罰を科されると必ず最低ランクの第5類になる仕組みである(以上、規則45条)。

 「優遇区分」による違い(「優遇措置」)は、室内装飾品、嗜好品、自弁物品、発信回数である(46条)。

・第1類は、室内装飾品の貸与、月1回以上の嗜好品の支給、寝具・衣類・室内装飾品・サンダル・娯楽品(CDプレーヤーが想定されているとのことである)の自弁許可、月1回以上の飲食物の自弁許可、月2回以上の嗜好品の自弁許可、面会時間が他の2倍、面会回数が月7回以上、発信回数が月10通以上。

・第2類は、室内装飾品・サンダルの自弁許可、月2回以上の嗜好品の自弁許可、面会回数が月5回以上、発信回数が月7通以上。

・第3類は、室内装飾品・サンダルの自弁許可、月1回以上の嗜好品の自弁許可、面会回数が月3回以上、発信回数が月5回以上。

・第4類は、発信回数が月5回以上。

・優遇措置のない第5類も、法92条により面会回数は月2回以上、法97条により発信回数は月4回以上が保障されている。

(4) 新しい個別的処遇の問題点

 新しい個別的処遇と累進制との最大の違いは、①累進制は画一的で全員が4級からスタートするが、新法の個別的処遇では要警備度の評価によってはいきなり第1種ということもありうること、②累進制では自弁物品や発信回数などの生活条件が要警備度の評価と一体化していたが、新法の個別的処遇では要警備度による制限区分と受刑態度による優遇区分が切り離され、制限区分は第4種だが優遇区分は第1類ということもありうることになった。

 一言で言えば欧米の最近の方式への転換で、運用次第では合理的な制度にもなりうるが、累進制と変わらない運用をされれば、「より苛酷な累進制」ということにもなりうる。今後の運用を監視したい。

 また、制限区分の第4種は「居室棟内」で処遇するとされており、旧法下の「昼夜独居」に相当するものとも言われている。しかし、旧法下の昼夜独居の大部分は旧監獄法施行規則47条の「戒護のための独居拘禁」(保安上独居)であり、また旧法下では保安上独居を含む全て独居拘禁の全てについて、旧施行規則27条の期間制限(原則6か月、必要ある場合に3か月ごとの更新)が適用されていた。受刑者処遇法でこの保安上独居に相当する制度は、法53条の「隔離」であり、これには期間制限があり(原則3か月、必要ある場合1か月ごとに更新、数少ない「審査の申請」の対象事由にもなっている。

 もし、制限区分第4種が昼夜独居に相当するものとすると、新法27条の隔離との区別が重要になる。その区別があいまいでなら、隔離に関する期間制限や不服申立を脱法する重大な問題となる。制限区分第4種の処遇場所は「居室棟内」とされ、「居室内」とはされていないので、従来の昼夜独居とは相当違うものともなりうるし、そう願いたいものだが、いずれにしろ最大の関心を持って注視する必要がある。